蓄電技術の比較

下の図は、アメリカのESA(Electricity Storage Association)から、拝借して来ました。
色々な似た様な図があるが、これが分かり易い。

Utility(電力会社)レベルで使うためには、10メガワット〜100メガワットの電力を数時間蓄電して、それを数時間かけて放電出来る必要がありますが、この図でいくと今のところ可能性のあるのは下記の技術でしょうか。

  • PSH:Pumped Hydro
  • CAES:Compressed Air 圧縮空気
    • 地下の大きな空洞に圧縮した空気を送り込んでエネルギーを溜める(下記の絵を参照)
    • 場所に制限があるし、個人的には何か怖い
    • でも100メガワットを10時間蓄電出来るというのはすごい
    • モーター(巨大だが)さえあれば良いので、環境に優しい?
    • 今週行って来たEnergy Storage Summitで情報を集めて来たので、またレポートします

  • Na-S:Sodium Sulfurナトリウム・硫黄電池
    • この図で見ると、数10メガワットを10時間程度保持出来るとなっている
    • 今、一番ポピュラーでしょうか
  • VR:Vanadium Redox
    • バナディウムを用いたフロー電池
    • この図で見ると、数メガワットを数時間程度保持出来るとなっている
    • 昨日書いた様にこれからの技術ですが、大型化が可能で、Na-S(ナトリウム・硫黄電池)の様に常に300度に温める必要はありません
    • タンクを大きくすれば、蓄電量を増やせるはずだし、Na-Sの様に危険な物質を使う必要が無い
    • なお、Redoxはreduction-oxidation reactionの略
  • Zn-Br:Zinc bromide
    • 亜鉛臭素を用いたフロー電池
    • この図で見ると、数メガワットを1時間程度保持出来るとなっている
    • 先日書いたようにオバマ大統領の訪問先がこの電池を開発/製造しています
    • この図で見ると、1〜2時間が限度なのかな?Utility向けというよりは、オフィスや事業所向けかも
  • FW:Flywheels(フライホイール
    • 円盤を高速回転させ電気エネルギーを回転の運動エネルギーとして貯蔵
    • 瞬間停電時に回転の運動エネルギーを電気エネルギーに変換して、電源を供給する(なので、数分しかもたない)
    • 内蔵バッテリーを持たないので、バッテリー交換などのメンテナンスが不要
    • 案外、実用化されていますし、ベンチャー企業も出て来ています
  • LA:Lead Acid
    • 車の中でおなじみの蓄電池です
    • 実績はあるが、場所を取るのと重たいのが問題ですね
    • 場所を取るのと重たいのを我慢すれば一杯並べれば使えるけど
  • NiCd:ニッケル・カドミウム蓄電池
    • この図で見ると、1メガワットを10時間保持出来るとなっている
    • 最近はあまり聞かないですが
    • 使用しているカドミウムが有害
  • Li Ion : lithium-ionリチウムイオン
    • この図で見ると、1メガワットを1時間保持出来るとなっている
    • Utilityレベルの蓄電にはまだまだですかね(それに高そう)
    • アメリカではA123 Systemsとかが頑張っています
    • 東京で日本交通とBetter Placesが共同で運用している電気自動車タクシーには、このA123のリチウムイオンバッテリーが使われています
    • ノートパソコンなどに多く使用されていますね
    • 常用領域と危険領域が非常に接近していて、安全性確保のために充放電を監視する保護回路が必要

色々あるようで、「数十メガワットを数時間保持出来る」ものは意外に無いですね。「圧縮空気蓄電」はずっと言われ続けていますが、なかなか一般には普及しないだろうし、「揚水型水力発電」もこれからは増えないでしょうし。
アメリカの場合、トータルの電力消費量は頭打ち傾向ですが、とにかく石油依存(中東依存)を極力排除すると言う国家目標に向かって進んでいます。石油に依存しない発電量を増やすには、太陽光発電所・太陽熱発電所風力発電所をガンガン作れば良いが、これらの自然に左右される発電所を作れば作るほど「蓄電出来る電力量」も同じ割合で増やしていかなければいけないです。先日も書いたが、自然エネルギで発生する電力の20〜30%はグリッドのどこかで蓄電しなければ安心出来ないですね。

by 阪口