ショートって本当にリスクが高いの?

証券・投資業界に何年もいた人間としては恥ずかしい話なのですが、先月までショート(空売り)をしたことがまったくありませんでした。ショートが何かはもちろん理論的には知っているけど、なんだか「自分が持っていないものを借りてきて売る」という説明にしたってなんとなく胡散臭い感じがするし、たいていの投資の案内を見ても「ショートはリスクが高い」ということばかり目に付いて、ちょっと気後れがしていたわけ。でも現在の米国のサブプライム市場のように、どこに投資しても市場全体が下がる一方だから利益はまず出ない(例えば、通常不況の折にはディフェンシブ、景気が良くても悪くてもみんなが買わなければならない生活必需品の業界に投資しておくのが安全でいいといわれているけど、”Consumer Staples(必需消費財)"のファンド(例えばFidelityのFDFAX)にしたって、トイレットペーパーつくってるKimberly Clarkに下って下がり続けている。確かに不況だからトイレットペーパーを買わなくなるわけじゃないだろうから、これは株式市場全体の「雰囲気」に引っ張られているんでしょうね)局面で、「買い」ばかりのポートフォリオが果して安全なんだろうか。

よくある「ショートはハイリスク」の理由説明の一つとしては、「買い」の場合は、いくら下がってもゼロになるだけで元本以上の損は出ないが、空売りの場合の損失は上限がないから、というのがある。でも「買い」のポジションを持っている人でも、値段がゼロになるまで待っている人はまずいないのではないでしょうか。まずたいていは、そこそこ下がったところで損切りして売るよね。ショートの場合も、「あ、判断を間違った」と思ったところであきらめよく買い戻せばよいだけではないか?それでも値段をフォローしているのが面倒で、急に値段が上がったら困る、という向きはストップロスのオーダーをあらかじめ設定しておけばよいのではないか?それでも、そんなにリスクがあるのだろうか。

ちなみに、先月受けたCFAの3次試験(まだ受かるかどうかわからないけど)の勉強用資料の中に、ヘッジファンドで「買い」と「空売り」の業績を較べてみると、わずかだけど「ショート」の部分の方のリターンが高い、というのがあった。これはもちろん市場の状態にもよるのでしょうけど、でも売りの方が儲かる理由としては、通常の投資信託は「空売り」ができない、証券会社のアナリストは断然「買い」推奨の方が「売り」より多い、などでまあ、「売り」で儲けようという人のほうが少数派だから他人のやらないことをやって儲けやすい、ということのようです。

というわけでちょっと考えてみたら「売り」をしない理由はないんじゃないか、ということで、目からウロコ。でも実際にやってみないとまあわからないので、実験的に・・・ の具体例はまた明日書きます。(追記:明日、というのはウソ。翌々日から休暇に入ってしまいしばらくお預け。)

ちなみに「目からウロコ箱」のカテゴリーは、大前研一の「即戦力の磨き方」のなかに「目からうろこが落ちる思いをした」ことがらは「ウロコ箱」に入れておくといい、後になってみたときに自分の成長、思考回路の変化がわかる、というようなことがあってなるほどと思った次第です。