テキサス・レシオ - 米国のアブナイ銀行を見つける一つの指針

米国市場はいよいよ、「金融危機、第2幕」なんて感じになってきました。さて、銀行の健全性(というか、不健全性)を表す指標としてTexas Ratioというのを初めて聞いたのは今年の4月ですが、7月半ばに銀行株の暴落時にABCニュースが取り上げて一躍、有名になりました。80年代の貯蓄組合(Savings and Loans)危機(特にテキサス州でひどかった)の際、Gerald Cassidyというアナリストが使い始めた指標で、銀行の不良債権残高を有形自己資本と損失割り当て準備金で割ったもの。つまり失う可能性の高い資産に対しどれだけおカネを持ってるかですが、この割合が100%を超えるとアブナイということだけど、確かに7月に破綻したIndyMacは150%だったといいます。

ちなみにABCでは7月時点で、このレシオが100%を超える銀行を発表しています。

もちろん、このレシオだけでは銀行の健全性を判断できないという批判もある。ひとつには、Texas Ratioが比較的低い「優良金融機関」(これも7月時点)のトップにWashington Mutualが入っているけど、同行は今は、あぶない方の上位に数えられてますね。このレシオは従来タイプの、預金を取って貸出しする、という銀行業務の健全性はある程度把握できるけど、デリバティブや住宅抵当証券への投資など、貸出し業務のバランスシートにのってこないものはレシオに関係ないので、そこんとこでアブナイ業務をしてる場合は、把握できないというのも一つの理由です。でも・・・逆は必ずしも真ならず。レシオが低いからといって安全だとはいえないが、極めて高い場合は、通常の銀行業務事態がリスクの高い状態になってるわけで、やはり、危険性は高いのではないか、と思うのです。

ところで蛇足だけど、先ほどダンナがテレビを見てたら、カリフォルニアの住宅価格はまた一段、下がる。その理由は「Option ARM*1」と呼ばれる住宅ローンの利率が上がる期限がもうすぐ来る借り手がたくさんいる。Option ARMというのは当初数年(5年が多い)、利率が低く、しかも元本を返済せずに利息だけ払うというオプションがあるので返済が楽。しかし5年の期限の後、利息、元本を合わせた支払額が急に上がるというもので、この借り手は当然、その時点で返済が難しくなる。そこでこのローンのデフォルト率は通常ローンよりずっと高いのだが、そのOption ARMの全米の60%がカリフォルニアにあり、だからこれからまた、債務の不履行、差し押さえがどっとふえ、不動産価格が落ちるのよ、とのことだった。

今回のサブプライム危機がすぎたあとで、「テキサス・レシオ」から「カリフォルニア・レシオ」に変わってたりして・・・

*1:Adjustable Rate Mortgage、一定期間の後利率が変動性になる住宅ローン。