燃料電池(1)

最近、北米(アメリカ・カナダ)における燃料電池の開発状況や活用状況について色々調べたので、何回かに分けて書きます。

燃料電池は、基本的に水素と酸素を燃料として、電気分解の反対のプロセスを使って、発電する機関です。廃棄物は合成によって出来る「水」だけです(2H2 + O2 → 2H2O+発電)。水素供給環境が整っていないため、定置型の装置では都市ガスを内部で改質して用いる方法が今のところ一般的になっているため、改質時に少しですが排気ガスとCO2がでます。

熱エネルギーとか運動エネルギーとかを経る事が無いため、熱機関特有のカルノー効率に依存せず、発電効率は非常に高いです。(熱から「カルノーサイクル」にそって発電する「スターリングエンジン」に匹敵するエネルギー効率だと思います。「スターリングエンジン」に関しては、また書きます。)

燃料電池発電の現在の状況を色々調べてみると、基本的な技術とか素材とか製造技術とかはかなり日本の方が進んでいるようです。既に、日本でも「エネファーム」とかで、実用化が始まっています。
まだ補助金無しではとても家庭で導入出来ませんが、非常に高い効率で発電し、廃熱でお湯を沸かし、余った電気はグリッドに還して少しはお金も返って来て、と巧く活用されています。余った電気を、高価な「蓄電池」とかに貯えずにお湯を湧かす事に使うというのは、お風呂好きな日本人にぴったりの発想ですね。水は蓄電にぴったりな物質です。(写真はパナソニック製の装置。左が発電装置で右が貯湯装置。)

車への搭載も、最近の電気自動車ブームに隠れてはいますが、 世界中の自動車メーカーが非常に力を入れています。(右の写真はロンドン市内を走っているMercedes-Benz社の燃料電池バス。)

最近流行の電気自動車はやはり走行距離に制限が有り、充電時間も長く、将来はこれらの問題は解決されるかもしれませんが、今の時点で「将来主流になる」とは誰も言えないと思います。
もちろん、Tesla Motorsロードスターの様な車は、お金持ちのセカンドカーとしての存在価値は十分あり、日産のゴーン社長の狙う普及型電気自動車もそれなりのニーズがあると考えます。

将来の車の主流が「プラグインハイブリッド車」になるのか、「電気自動車」になるのか、はたまた「燃料電池車」になるのかは、これから10年ほどの技術革新とインフラの整備状況をみながらゆっくりと決まって行くのではと思っています。
「電気自動車」の本格的な普及には「充電ステーション」の普及と「走行距離の拡大」「高速充電技術の開発」が必須になります。また、「燃料電池車」の普及には「水素ステーション」の普及または「他の燃料から水素への改質技術の向上」が重要です。(いずれにしろ、低価格化は当然必要ですが、これは主流になって数が増えると自然に何とかなる物でしょう。)

アメリカでは、ここ10年ほど、水素エネルギーに関する研究開発に大きな予算が割かれ、大学や政府系研究機関で地道な開発がなされています。ベンチャー企業も頑張っています。

日本における燃料電池の開発や実用化の方向を、アメリカでの状況と比較しながら、少しずつ検討して行きたいと思います。

ところで、燃料電池はどこをどう見ても電気を溜める「電池」では無く「発電機」です。誰がこういう訳を最初にしたのでしょうね。もっとも元々の英語の「Fuel Cell」というのも、よく分からない英語ですが....「太陽電池」というのもおかしな表現ですね。これも正確には「太陽光発電」というべきでしょう。

by 阪口